
1個、1枚、1匹、1台…日本語には数百種類の助数詞があるらしいです。つくづくめんどくさい言語です。そんで「座」というのは山を数えるときの単位で、つまり「8000m峰14座」というと地球上にある標高8000メートル以上の、14の山々の総称。地球上といっても、これら全てヒマラヤ山脈とその北西にあるカラコルム山脈に集中しています。
写真家と登山家の二刀流、石川直樹さんが世界の8000m峰14座全てに登頂する偉業を成し遂げました。「14サミッター」と呼ばれる14座を完全登頂した人は世界で50人ほどいるそうですが、その危なくて難しくてお金と時間のかかる挑戦に勝利した偉人たちの1人になったわけです。
- どんな道のりで14座制覇に挑んだのでしょう?
- 石川さんてどんな経歴の方?
- 写真はどこで見られる?
このような疑問を解くべく、これまでの石川さんの足跡を追跡してみます。
★ もくじ
8000m峰制覇への23年間
14座完登までの道のり
スタートは、2001年に23歳でエベレストに登頂、7大陸最高峰登頂の最年少記録を更新したところから。
その後、写真家としての活動と並行して8000m峰への挑戦を続け、2011年にはエベレストに再登頂。同年以降、マナスル、ローツェ、マカルーなどの高峰を次々と制覇していきました。
2022年には、ダウラギリ、カンチェンジュンガ、K2、ブロードピークの4座に登頂。さらに2023年には、アンナプルナ、ナンガパルバット、ガッシャーブルムI峰、チョオユーの4座を成功させ、一気に14座完登に近づきました。
そして2024年10月4日、47歳でついに最後の頂となるシシャパンマ(8027m)を制覇し、8000m峰14座の完登を達成しました。
挫折と再挑戦の繰り返し
2012年にマナスルに登頂した際、最高地点の「認定ピーク」に到達できなかったため、2022年に再挑戦を余儀なくされました。また、最後のシシャパンマでは、2023年10月に山頂付近で発生した雪崩事故により、一度は山頂間近で断念を強いられています。
軽量化された特殊カメラ?
過酷な山に登る人は荷物を極限まで軽量化するので、さぞかし彼の使うカメラも…と思いきや、従来の中判フィルムカメラを好んで使用しています。主に使用しているカメラは「プラウベルマキナ」と「マミヤ7」とのことなので、決して重いタイプではないですが。
また、最近の遠征ではネットで買ったキヤノンのオートボーイなどの安いカメラも使用しているようです。要は[道具<腕]ってことですな。
登山写真家・石川直樹さんの経歴
若い頃から芽生えていた冒険心
1977年6月30日に東京都渋谷区で生まれた石川さんは早稲田大学第二文学部を卒業後、東京芸術大学大学院美術研究科で修士課程と博士後期課程を修了しました。しかし冒険心は若い頃からあり、中学2年生の冬休みに高知県への一人旅を経験、高校2年生の夏休みにはインドとネパールを一人で訪れ、初めてヒマラヤ山脈を目にしています。
登山の経歴
石川さんの登山家としてのキャリアは20歳でアラスカのデナリ(旧称マッキンリー)に登ったことから始まります。その後、23歳で七大陸最高峰を当時の最年少記録で制覇しています。ほかにも、
- 2000年:「Pole to Pole2000」プロジェクトに参加し、9ヶ月間かけて北極点から南極点を人力で踏破
- 2001年:ヴィンソン・マシフ(南極)登頂
- 2022年:K2、ブロード・ピーク(パキスタン)など複数の8000m峰に登頂
などなど、なんかもうわけわかんないです。
写真への目覚め
高校生の頃には、すでに山登りに夢中であり、その体験を記録するため安いコンパクトカメラを持ち歩いていました。ある日、雪山での登山中に撮った写真を現像していたとき、石川さんは衝撃を受けます。カメラが捉えたそのときの景色は彼の記憶よりもはるかに鮮明で感動的で、この経験が写真の持つ力と可能性に目覚めるきっかけとなりました。
それ以降、石川さんは写真を撮ることに熱中し始めます。山岳風景だけでなく、街の風景や人々の表情など、あらゆる被写体に挑戦しました。カメラを通して世界を見ることで、今まで気づかなかった細部や瞬間の美しさに気づくようになりました。
石川直樹さんの写真展
最新写真展の開催日程
■奥能登半島
会場:ニコンサロン/新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー28階
2024年11月26日(火)- 2024年12月9日(月)
10:30- 18:30(日曜休館、最終日は15:00まで)
■Animal Encounters - 旅と動物 -
会場:森 喫茶/千葉県長生郡睦沢町上之郷1994-1
2024年11月23日(土)〜2025年1月26日(日)
11:00-17:00(営業日/土、日、月、火)
2024年に開催された写真展
2024年2月18日まで、千代田区立日比谷図書文化館にて「石川直樹:ASCENT OF 14 ー14座へ」を開催。22年間にわたって関わってきた、ヒマラヤとカラコルム山脈の8000m峰14座の写真が展示されました。
また福島県郡山市のtotonoeru gallery cafeでは「火山は眠っている」と題した写真展を2024年2月25日まで開催。ここでは、冬の磐梯山を撮影した未発表作を含む約12点の写真が展示されました。
さらに、東京都現代美術館の企画展「歩く、赴く、移動する 1923→2020」において、石川さんの「THE VOID」シリーズの、作品を2024年3月10日まで。山形県酒田市の土門拳記念館では「土門拳賞コレクション 自然・動物写真の系譜」展で、石川さんの「CORONA」シリーズの作品が2024年3月31日まで展示されました。
写真集
『チョ・オユー』(平凡社)
8000m峰13座目に登頂した、ネパール・チベット国境のチョ・オユー。その山行を極限下で写した写真集。
13,000円+税/ B4/ 112ページ
『Nanga Parbat』(SLANT)
中判フィルムカメラで撮り下ろすヒマラヤシリーズの最新刊。
3,300円+税/ H280×W300mm/ 48ページ