
異例のスピードで企業価値4000億円規模に成長したサカナAI。ただキャッシュレスすら遅々として広がらず、ChatGPTをチャッピーなんて呼んでる子どもたちを見てると、この先この国で展開していけるのかと。
しかし日本を拠点にした理由はもちろん明確にあって、海外の激しい競争から離れて人材を獲得しやすい環境を整えるため、そしてグローバルでも戦えるテクノロジーを日本の課題にぶつけたいとのことからだそうです。
★ もくじ
デビッド・ハの経歴とAI
ゴールドマン・サックス
デビッド・ハ氏は香港で生まれ、幼少期にカナダへ移住。トロント大学で人工知能(AI)を専攻し、基礎を築きました。
その後、米国のゴールドマン・サックスに入社。2008年に日本法人に派遣されて金利取引の責任者を務めました。金融業界での経験を積んだ後、東京大学で博士号を取得しています。
博士号取得後は、Googleに入社。2016年にはGoogle Brain(Google ResearchのAI開発チーム)に所属しました。2017年からGoogle Brainの東京チームのトップを務め、大規模言語モデルの基盤技術などの研究開発に携わりました。
Stability AI
2022年にGoogleを退社した後はイギリスのユニコーン企業Stability AIの研究トップとして勤務し、そこで先進的なAI研究をリード。そして2023年6月にStability AIを退社し、翌7月に日本で「Sakana AI」を共同設立しました。
Sakana AIは日本初のグローバルAI企業を目指し、ハさんはCEOとして最先端AI技術の研究開発と実用化に注力中。ちなみに日本語も堪能で、日本語能力試験N2を取得しています。バカっぽい表現で恐縮ですが、とんでもなく頭がいいです。
サカナAIとはどんな企業?
どんな会社?
サカナAI株式会社は、2023年に設立された日本のIT企業で、東京都港区西新橋に本社を置いています。共同創業者はハさんのほかライオン・ジョーンズ(Llion Jones)氏、そして元外務官僚の伊藤錬氏の3名。
設立から1年ほどで日本史上最速となるユニコーン企業(企業価値が10億ドル超の未上場企業)に成長し、その企業価値は約4000億円(11億ドル)規模に達しました。
社名の由来
「サカナAI」という名前はサルゴリラのコントに感銘を受けてというのはもちろん嘘で、日本語の「魚(さかな)」に由来し魚の群れが個々の違いを持ちながらも一つにまとまって大きな力を発揮する様子にインスパイアされたもの。
異なる特徴を持つ複数のAIモデルを組み合わせ、高度な人工知能を開発することを目指しています。
技術開発と特徴
サカナAIの技術的特徴で最も注目されるのは、大規模言語モデル(LLM)と複数の小規模AIモデルを効率的に連携・統合する「進化的モデルマージ」という独自技術。
これにより、大規模なデータや計算資源をあまり使わずに、つまり過剰な電力使用を抑えながら高性能なAIを短時間かつ低コストで実現しています。
ビジョンと今後の取り組み
日本初のグローバル生成AI企業を目指し、日本語に特化した自然な対話能力や高度な問題解決ができるAIモデルの開発に力を入れています。また、医療や教育、エンターテインメントなど社会のさまざまな課題にAI技術を活用して貢献することを目標としています。
技術開発の柱を担う、ライオン・ジョーンズ
共同経営者兼CTO
共同経営者兼CTOのライオン・ジョーンズ(Llion Jones)氏は、Googleに12年間勤務していました。「Attention Is All You Need」と題された論文の共著者として知られており、この論文で生成AIの核心となる深層学習モデル「Transformer」の仕組みを提案。
これは現在の大規模言語モデル(LLM)技術の基盤となっています。
進化的モデルマージ技術
同社の技術的な柱の一つとして、進化的モデルマージという技術があります。これは複数のAIモデルを統合し、個々のモデルの強みを活かしながら全体の性能を向上させるアプローチ。
この技術で、より高度で柔軟な言語処理能力を実現し、自然言語理解や生成の質を向上させています。
伊藤錬のビジネス感覚と国際戦略
ビジネス感覚
伊藤氏は2001年に東京大学法学部を卒業後、外務省に入省。アメリカの日本大使館勤務や日米安全保障、日EU経済連携協定交渉に従事してきました。この経験から、国際的な視点を持ちつつ日本の文化や社会課題に貢献する事業展開を志向しています。
国際戦略
その柱は、世界の優秀な研究者や人材を日本に呼び込むこと。米西海岸などの最先端地域からトップレベルの専門家を招き、その人材がまた次の優秀な人材を呼び込むという連鎖を作り上げています。



