
2019年、初期コロナ騒動の頃に配信されたNetflixのドラマ「ボクらを見る目(When They See Us)」を今さら観たんですが、かなりの胸クソ系で。そんで事件について調べたんですけど、日本語ではあまり出てきません。なので、頑張って英語で漁りました。
関係ないけど個人のトレンド系ブログの記事タイトルで「wiki経歴」って書かれたのよく見ますが、Wikipediaの意味がわかっていない変な語ですよね。検索に引っ掛けるのが目的だとしても。
セントラルパーク・ジョガー事件の発生から裁判までの経緯
セントラルパーク・ジョガー事件とは1989年春のニューヨークで起きた、ひとりの女性ジョガーへの残酷な暴行事件と、その後「セントラルパーク・ファイブ」と呼ばれる5人の少年の誤認逮捕・裁判をめぐる冤罪事件のこと。
事件発生と被害者
1989年4月19日の夜、ニューヨークのセントラルパークでジョギングをしていた白人女性の銀行員、トリーシャ・メイリ(Trisha Meili)さんが何者かに襲われ、激しい暴行とレイプを受けました。
彼女は頭部を強く打たれて意識不明のまま倒れているところを発見され、病院に運ばれたあとも12日間ほど昏睡状態が続きます。助からないかもしれないと考えられるほどの重体でしたが、なんとか一命は取りとめました。
逮捕された少年たちと背景
事件当日の夜、セントラルパーク周辺では10代のガキどものグループが、いたずらや暴力行為をしたりしていたとされ、警察はこのグループの少年たちの一部を次々と拘束しました。
その中からアフリカ系やラテン系の少年たち、ケヴィン・リチャードソン(Kevin Richardson)、レイモンド・サンタナ(Raymond Santana)、アントロン・マックレイ(Antron McCray)、ユーセフ・サラーム(Yusef Salaam)、コリー・ワイズ(Korey Wise)の5人がジョガーへの暴行事件の容疑者として本格的に取り調べを受けることになります。
彼らは、まだ14〜16歳。当時のニューヨークは、あの名市長ジュリアーニさんの就任前で犯罪や人種問題もまだ多く、黒人やラテン系の少年たちは特に疑いの目を向けられやすい状況にありました。
なので夜9時にセントラルパークへ出向いた彼ら、というか親も危機管理にかけていましたね。だからといって警察と検察による冤罪への落とし方が強引過ぎなのは変わりませんが。
取り調べと自白の強要
警察は保護者や弁護士が十分に立ち会わないまま、少年たちに対して長時間の厳しい取り調べを行います。少年たちは心理的に追い詰められ、早く家に帰りたい一心で警察の言うストーリーに合わせたような自白をしてしまいました。
なので結局それぞれの自白には食い違いや矛盾が多く、誰がジョガーを襲ったのか誰がどこにいたのかという点が全然一致しません。また現場から採取されたDNAなどの科学的証拠も、5人の少年の誰とも一致しません。
しかし警察と検察は、これらの強引にでっち上げ吐かせた自白を重要な証拠として扱いました。
マスメディアと世論の過熱
事件は「セントラルパーク・ジョガー事件」として大きく報じられ、ニューヨーク中だけでなく全米の注目を集めました。一部の新聞は、まだ有罪が確定していない段階から少年たちを野獣扱いして、過激な表現を使い人種的偏見をあおるような見出しで報道します。
当時、不動産王として知られていたドナルド・トランプが新聞に大きな広告を出し死刑制度の復活を求める意見を公表するなど、世間では厳罰を主張する声も強まりました。こいつ昔からこんな感じなんですね。
とにかく、こうした報道と世論の高まりが少年たちを「犯人」だと決めつける空気をさらに強くしていきます。
第1回裁判の開始
裁判はまず、アントロン・マックレイ、ユーセフ・サラーム、レイモンド・サンタナの3人を対象にして始まりました。
1990年6月25日に始まって8月18日まで続き、それぞれの少年に別々の弁護人が付きましたが、すでに世間が強い関心を寄せており、裁判所の外でも中でも事実とか関係なく感情的な雰囲気が漂っていたようです。
被害者メイリの証言
第1回裁判で被害者であるトリーシャ・メイリ本人も証言台に立ちましたが、彼女は事件の記憶をほとんど失っており、何が起きたのかを細かくは覚えていません。
また傍聴席には彼女に対して心ない言葉を浴びせる人々がいたこともあり、弁護側は被害者を厳しく追及することをためらって彼女への反対尋問はほとんど行われませんでした。人が人を裁くことの難しさが如実に表れていますわ。
第1回裁判の評決と判決
陪審員たちは約10日間にわたって評議を行い、その結果3人の少年は殺人未遂については無罪となりましたが、ジョガーに対する暴行やレイプ、そして同じ夜に別の男性ジョガー、ジョン・ラフリン(John Loughlin)が襲われた事件に関する暴行や強盗の罪について有罪とされました。
裁判官は少年たちに少年施設や刑務所での服役を命じ、暴行もレイプもしてないのに彼らは数年にわたって貴重な青春時代の自由を奪われることになります。
第2回裁判と他の被告
続いて行われた第2回の裁判での主な被告は、ケヴィン・リチャードソンとコリー・ワイズ。この裁判でも警察で録画された自白映像などが証拠として使われ、検察側は少年たちが集団でジョガーを襲ったと主張しました。
一方、弁護側は自白が強い圧力のもとで作られたものであり物的証拠が乏しいことを訴えましたが、世間の空気感や他の少年たちに有罪判決が出ていることもあって、陪審員を十分に説得することはできません。
結局、2人も暴行やレイプなどの罪で有罪となり、特に当時16歳だったコリー・ワイズは成人として扱われ、他の4人よりも厳しい環境の刑務所に長く収容されることになります。無実の罪で。
裁判後の少年たちへの影響
5人の少年たちは、それぞれ数年から10年以上にわたり少年院や刑務所での生活を送って出所しましたが、当然その後の人生は簡単ではありません。
性犯罪者として登録される義務や前科があるという事実のために、仕事を見つけることや学校に通うこと、人間関係を築くことにも苦労します。マスメディアで大きく報じられたことで「セントラルパーク・ジョガー事件の犯人」として長く見られ続けたのです。
真犯人マティアス・レイエスの登場と冤罪の発覚
真犯人の自白とDNA鑑定
事件から十数年がたった2002年、マティアス・レイエス(Matias Reyes)という男が、自分こそが1989年のセントラルパーク・ジョガー事件の真犯人であると名乗り出ました。
レイエスは当時すでに別のレイプや殺人事件で服役しており、警察に対し一人でジョガーを襲ったこととその詳細な状況を供述。
改めてDNA鑑定が行われたところ、現場から見つかった精液などのDNAがレイエスのものと完全に一致、5人の少年とは一致しないことが確定します。
これにより、5人の自白が真実ではなく、強い圧力の中で作られたものであった可能性が、はっきりと示されることになったわけです。
有罪判決の取り消しと冤罪の認定
マティアス・レイエスの自白とDNA鑑定の結果を受けて、ニューヨーク市の検察当局は事件を再調査、2002年に5人の有罪判決を正式に取り消し。裁判所も5人がジョガーへのレイプ事件については冤罪であったと認め、記録上でも有罪を取り消す決定を出しました。
こうして「セントラルパーク・ファイブ」と呼ばれた彼らは世間的にも法律上でも一応名誉を回復されることになりますが、時は遅すぎた。失われた10代・20代の年月は戻ってこないわけで。
5人への賠償金と社会的影響
その後の民事訴訟と社会的評価
無罪が認められたあと、5人はニューヨーク市を相手取り「違法な取り調べや不当な起訴によって人生を奪われた」として賠償を求める民事訴訟を起こしました。
長い争いの末、2014年ニューヨーク市は5人に対して総額約4,100万ドルの和解金を支払うことに合意、州からの補償を含めて冤罪に対する公式な謝罪と補償を行います。
5人はその後も、警察の取り調べのあり方や人種差別、メディア報道の危険性について積極的に語り、多くの講演や活動を通じて同じような冤罪をなくすための取り組みを続けています。
さらに、Netflixのドラマを通じて世界に広く知られるようになりました。
リンダ・フェアスタインの関与と現在
リンダ・フェアスタインの関与
ドラマ『When They See Us(ボクらを見る目)』では頭から少年たちを犯人と決めつける様子が描かれ、観てる側として相当イライラさせられます。実際に世間の嫌われ者となりますが、自身の関与については非を認めていないらしい。
彼女は当時、マンハッタン地方検事補としてこの事件の性犯罪捜査に深く関わりました。性犯罪事件の専門家として知られ、1976年から25年以上にわたってマンハッタン地検の性犯罪担当のトップを務めています。
しかし後に、その冷酷な捜査手法は、性犯罪が許せないというのとは別の話で世間から大きな批判を浴びることとなりました。
現在のリンダ・フェアスタイン
現在のフェアスタインは作家として小説を執筆しており、公的な発言は控えめ。しかしドラマをきっかけに再度炎上し、その事件関与の事実と評価が彼女のキャリアや社会的評価に長期的な影響を及ぼしているようです。



