犯人は自転車で逃げたそうです。プロの犯行と言われていますが、スマートさに欠けているように見えるのは[プロ=佐藤明]のイメージが強すぎるからでしょうか。
世界最大のヘルスケア企業ユナイテッドヘルスのグループ会社「ユナイテッドヘルスケア」のCEO、ブライアン・トンプソン氏が、ニューヨークの街中で銃撃され死亡。事件はNY中心部、マンハッタンにあるホテルの前で起きました。
なぜトンプソン氏が狙われたのか。犯人は誰なのか。そして、この事件が米国の医療保険業界に与える影響は?
★ もくじ
ブライアントンプソン氏 銃撃事件の概要
マンハッタンのホテル前で待ち伏せ
ユナイテッドヘルスケアの50歳のCEOブライアン・トンプソン氏は、2024年12月4日水曜日、東部の標準時で午前6時45分頃にマンハッタンのホテル「ニューヨーク・ヒルトン・ミッドタウン」の外で射殺されました。
銃撃は、トンプソン氏が投資家会議に到着した際に発生。犯人は、薄茶色というかクリーム色のジャケットに黒いスキーマスクを着用した白人男性で、襲撃の約5分前からトンプソン氏を待っていたとのこと。
ちなみにアメリカでは、早朝ミーティングは非常に一般的。「breakfast meeting」とか言って、参加者は朝食を持参したり会社によってはコーヒーや軽食を用意したりします。
多くの人にとって、朝の時間帯は脳を使う仕事に最適でエネルギーが高く、いちばん集中できる時間帯だとされています。朝型夜型は先天的なものだという説もあるんですが。
背中とふくらはぎを撃たれる
犯人は少なくとも3発の銃弾を発射、トンプソン氏の背中とふくらはぎを撃ちました。彼は負傷後、数歩進みましたが犯人の方へ向きを変え、そして倒れました。
犯人は自転車で逃走、懸賞金で捜査
銃撃後、犯人は最初走って逃走しましたが、最後に目撃されたのは電動チャリでセントラルパークに入っていったところでした。動機は今んとこまだ不明。ニューヨーク市警は全体で犯人捜索を行なっており、防犯カメラの画像を公開しています。
犯人の逮捕と有罪判決につながる情報には、最高1万ドルの報奨金がかけられました。
ユナイテッドヘルスケアという会社とCEOについて
ユナイテッドヘルス・グループの主要な事業部門の1つ
本社はミネソタ州ミネトンカで、ユナイテッドヘルスグループの医療保険およびサービスの会社。医療会社として世界最大の収益を誇り、1億5,200万人以上の人々にサービスを提供、2024年には約4,000億ドルの収益が見込まれています。
従来の保険だけでなく、企業が従業員の健康増進を目的として行うウェルネスプログラムや行動健康サポート、ケア管理臨床プログラムを提供しています。医療費が高いアメリカならではのビジネスなのかもですね。
50歳、2021年から保険部門トップに
アイオワ大学を首席で卒業し会計学の学位を取得したトンプソン氏は、プライスウォーターハウスクーパース社で公認会計士としてキャリアをスタート。
プライスウォーターハウスクーパースは、会計や税務、コンサルティング、法務など幅広い分野の専門家が活躍するグローバルコンサルティングファームです。
その後は20年にわたりユナイテッドヘルスグループで、メディケアや退職部門の指揮を含むさまざまな指導的地位を歴任します。CEOとして2,810億ドルの収益を生み出し、ユナイテッドヘルスグループ最大の子会社となった部門を管理しました。
彼の年間報酬は給与、ボーナス、ストックオプションを含めて合計1,020万ドル。円にすると、およそ15億3,000万でございます。
事件の背景
投資家向けイベントの直前に起こったという意味
捜査は継続中で明確な理由は明らかにされていません。しかしタイミングを考えると、何か見えてくるような。
- 内部情報:犯人はトンプソンのスケジュールと、会社会議が始まるかなり前に彼がヒルトンに到着することを知っていたっぽい
- 最大の影響:主要な投資家イベントの直前にCEOを狙うということは、混乱を引き起こして会社の株価や投資家の信頼に影響を与えることを意図していた可能性がある
- 機会:会議のスケジュールは予測可能であり、犯人が計画的に行動するには絶好の機会だった
- タイミング:犯人は象徴的な意味合いからこの瞬間を選び、会社が投資家にプレゼンを行う直前に襲撃したのかも
ただし、このへんの事実における意味と関連性はまだまだ調査中。
妻が語る脅迫の可能性と背景
妻のポーレット・トンプソンさんは、彼が医療保険の問題に関する脅迫を受けていたことを明らかにしました。
そして、この事件により、ユナイテッドヘルスケアと普段から目立たず公の場にはめったに姿を現さないトンプソン氏は、全米で注目を浴びることになりました。医療業界の複雑で闇深い性質が浮き彫りになった感じです。