イスラエル軍がヒズボラ戦闘員440人を殺害したと発表。地上戦の激化とイランへの報復姿勢をドヤっています。なんだか何十年にもわたって1秒たりとも平和な時が無いイメージの中東は、原因なんかを探っていくとどんでもなく複雑で難しくなるんで、まずは
- ヒズボラってハマスと何が違う?
- なんでイスラエルは両方と戦っているの?
- イランはどう関わってんの?
といった疑問について、誰にでも理解できるようできるだけ簡単に、ヒズボラとハマスの違いを整理してみました。
この2つは活動地域や支援国、イデオロギーなど多くの点で異なります。両組織の特徴を知れば、複雑な中東情勢の全体像がちょこっとは見えてくるのではないかと。
オオタニサンや他のワイドショーネタなんかもいいけど、世界で起こっていることは興味を持って認識しておきたい。
ちなみに中東諸国の間でさらに戦争が広がっていくと、日本で以下のモノの値段が爆上がりします。
- ガソリン価格
- 灯油の価格
- 電力料金
- プラスチック製品
- 包装材や容器
- 断熱材、食品トレー
- 靴下、ゴム、塗料、肥料
- 食料品
★ もくじ
ヒズボラとハマスの違い 5つのポイント
めちゃくちゃ簡単に言うと、どちらもイスラエルとの対立が軸ですがヒズボラはレバノンを拠点とし、ハマスの拠点はパレスチナのガザ地区。あとヒズボラはイランとの結びつきが強いのに対し、ハマスはパレスチナの民族主義的な側面があります。
設立の背景と、歴史的経緯
〈ヒズボラ〉
ヒズボラは1982年にレバノンで設立されました。ご覧のとおりイスラエルの北に隣接するのがレバノンです。
きっかけは、この年1982年にイスラエル軍がレバノンに侵攻してレバノン戦争が起こったから。このイスラエル軍に対抗するため、イランの革命防衛隊のバックアップを受けて創設されたのがヒズボラです。
なので最初っからイスラエルと戦うことがメインであり、組織の根本的な思想の中心は「打倒イスラエル」。さらに、イスラエルと仲の悪いイランから軍事面でもお金の面でも支援を受けることで、ヒズボラはどんどんパワーアップしていきました。現在にいたるまで、ヒズボラは対イスラエル戦の重要な勢力として活動を続けています。
〈ハマス〉
ハマスは、1987年12月の設立。ということはヒズボラの5コ下ですね。そしてその母体は、なんと元々ガザ地区で社会福祉活動を行っていた団体です。きっかけはパレスチナ住民が起こしたイスラエルに対する大規模な反乱で、ここからハマスは話し合いではなく武力や腕力などによって実際の行動に出る組織へと発展しました。
なお90年代の半ばからPLO(パレスチナ解放機構)はイスラエルとの和解路線を取り始めるんですが、ハマスはこれに反対。その後、2006年のパレスチナ自治政府選挙で勝って、ガザ地区を実質的に支配するようになりました。ハマスの最終的な目標はイスラエルの破壊とイスラム国家の樹立という、まことに穏やかでない夢をお持ちの方々です。
活動地域と支持基盤
どちらも単なる 暴力団 武装組織ではなく、社会サービスを提供したり政治活動を通じて、地域に深く根ざしているってことが特徴です。これによって、暴力を振るうから完全な悪党だ…とも言い切れず、実際それぞれの地域で強い支持を得ています。
まずヒズボラの主な活動地域は、上に書いたとおりレバノン。政党として活動しながら独自のラジオ局や衛星テレビ局を持つほか、2002年の時点で学校9校、病院3か所、診療所13か所を運営するなど、よい行いをすることでヒズボラは社会のインフラとしても機能しています。そのため、特に貧困層から人気。
一方、ハマスの主な活動地域はパレスチナ、特にガザ地区。ハマスも、これまた社会活動を通じて支持を獲得していて、メンバーは市役所の窓口業務や保健施設など、日常生活の中で公務員として活動しています。昼と夜の顔が違うって、何かの映画みたいです。
イデオロギーと宗派
ヒズボラのイデオロギーは、イスラム教シーア派の思想が基盤。「対イスラエル抵抗運動」を掲げ、イスラエルの後ろにいる西側諸国を敵対視し、同じシーア派国家のイランと仲良し。そんな多くの要素が絡み合った複雑なものとなっています。
ハマスはスンニ派で、イスラムの原理に基づく組織であることを明確に位置付けています。パレスチナの全土解放が目標です。
ここで、基本的なシーア派とスンニ派の違いについて。実は両派の信仰の基本は同じで、同じ神(アッラー)を崇拝し同じコーランを聖典としています。じゃあ何が違うかと言うと、誰が正統な後継者になるべきかという考え方。
スンニ派は選挙によって選ぶ方式、シーア派はムハンマドの血縁者であるアリーとその子孫を支持しました。日本の天皇は血縁者が皇位を継承するので、イスラム教にたとえるとシーア派的と言えますかね。
なお多数派はスンニ派で、イスラム教徒の約90%。血縁にこだわるシーア派は、約10-13%の少数派です。
軍事力と組織構造
総兵力 | 推定5万人から10万人(うち約7000人はシリア内戦経験者のエリート特殊部隊) |
武器 | - 約15万発のロケット弾とミサイル - 数百の精密誘導ミサイル - 数千の攻撃用ドローン - 射程300kmの短距離弾道ミサイル - 最大400km飛行可能な無人機 |
組織構造 | - 合法的な政党として国政に参加し、閣僚も輩出 - 福祉・教育団体、インフラ関連企業、メディア組織を傘下に持つ - 組織構造や戦略は正規軍に近い |
戦闘員 | 約3万人 |
武器 | - 中・長距離ミサイル:約2万発 - 精密誘導ミサイル(密輸により入手) - 海軍能力と攻撃用ドローンの能力も向上 |
組織構造 | - 効率性・凝集性に欠ける面がある - 意思決定プロセスが一元化されていない - 政治部門と軍事部門の連携が不十分 |
国際社会からの評価
ヒズボラとハマスは基本的にテロ組織として認識されているため、国際社会の評価はおおむね否定的。でも地域の政治的複雑さや人道的懸念を考えれば複雑な面もありまして。
たとえば、イスラエルのガザ地区への軍事作戦。最初はある程度理解を示していました世間も、民間人の犠牲者が増えていくにつれ批判的な見方が強まっています。アメリカの若者なんてデモ起こしてるし。そんなこんなで、国連ではパレスチナ自治政府の加盟問題が協議されたりと、結果的には世界を動かすきっかけになっていて、つまり血が流れないと改革は行われないわけで、状況は複雑化しています。
ヒズボラの今後
ヒズボラは、今のとこイスラエルとの争いをまだまだ続ける気マンマンなため、中東地域が安定するには問題が山積みでどこから手を付けたらいいのやら状態。
継続的な対イスラエル攻撃
ヒズボラは、イスラエルがガザへの攻撃を続ける限り戦闘を止めるつもりはありません。でもイスラエルもハマスの壊滅を目指しているため、攻撃を止める気がありません。
軍事力の維持
ヒズボラは依然として強力な軍事力を保持しています。推定15万発(!)のロケット弾やミサイルを保有しており、イスラエルの攻撃で一部が破壊されたとしても、なお相当数の兵器を保有していると考えられます。
組織の存続
ヒズボラの最高指導者でカリスマだったナスララ師が、2024年9月27日にイスラエル軍の空爆によってベイルート近郊で殺害されたと報じられました。しかし、すでに強固な組織作りに成功していて、トップがいなくなっても軍事的に無力化されることはないとされています。
ハマスの、近年の動向
ガザ地区での実効支配
ハマスは2007年6月以降、ガザ地区を実効支配しています。実効支配ってのは、正式な承認を得ずに一定の場所を実質的に統治している状態のこと。普段の彼らは政府を気取り、市役所での窓口業務や保健施設の運営などといった日常的な市民サービスを提供しています。
2023年10月の攻撃
2023年10月7日、ハマスはイスラエルに対し、境界を超えて大規模攻撃を開始。この攻撃で、1000人以上のイスラエル人が殺害され、100名以上がガザ地区へ拉致されました。
国際社会の反応
対してイスラエルは、ガザ地区への空爆で反撃。空だけでなく地上から攻める準備も進めています。国際社会、たとえば日本政府は1,000万ドル(約15億円)の緊急人道支援を発表しました。