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井上百貨店の跡地|140年の歴史に幕、2025年閉店後の行方と松本市の未来図

井上百貨店の跡地|140年の歴史に幕、2025年閉店後の行方と松本市の未来図

「井上」とか「松本」とか、なんか同級生感の強い地名によって、よりノスタルジーを感じるニュース。

松本の街並みを彩ってきた老舗百貨店が、2025年3月末その140年の歴史に幕を下ろします。といっても大きな商業施設の消滅は全国各地で起きているわけで、地球も国も生きているんだな、寿命があるんだな、という思いを改めて実感しました。

「あの場所でアレを買ったな」「初めてのバイトはあそこだった」など、誰もが思い出を持つであろう百貨店。

今回は、長野県松本市にその名を轟かせた井上百貨店について、その閉店の理由は何なのか、あの大きな建物がなくなった後に街はどう変わるのか、歴史なども振り返りながら新しい未来図を探ってみます。

井上百貨店、140年の歴史に幕を下ろす理由

時代の波に飲み込まれた老舗百貨店

井上百貨店が閉店を決めた理由は、一言で言えば時代の波。

1885年(明治18年)に呉服店として創業した同店は松本の街とともに歩んできましたが、オンラインショッピングの台頭や消費者のライフスタイルの変化によって、百貨店の存在意義が薄れてきたのですね。どこも一緒です。

衰退ぶりは売上高を見るのが一番鮮明で、1980年代に年200億あった売上が現在では半分程度。もちろん全国の百貨店が直面している課題でもあります。

加えて、建物の老朽化もデカかった。1979年に現在の場所に移転してから45年が経過し、大規模な設備更新が必要になっていたのです。しかし、そんな費用をまかなう余裕などなく現在の店舗での営業継続を断念せざるを得なかったという。どこも一緒です。

利用者の声から見える百貨店の役割

閉店のニュースを聞いた市民の反応はさまざま。

70代の利用者は「マジすか?松本で百貨店はここだけなのに…」という一方、50代の利用者は「ちょっとびっくりだけど、全国的にも百貨店がどんどんなくなっているという話を聞いたばかりなので、松本もか…という感じ」と、時代の流れを感じ取っています。

同店が、単なる商業施設ではなく地域のシンボルだったことがうかがえます。買い物の場所以外にも人が集まる場所、思い出を作る場所として、長年愛されてきたのですから。

井上百貨店跡地の行方、松本市の未来図

中核エリアの再設計

松本市の臥雲義尚市長は「松本駅前から松本城周辺まで市街地の中核エリアについて、見取り図を描きなおす必要がある」と述べています。

具体的には、商業はもとより観光、交通、住居、そして金融といったあらゆる要素を考慮し、都市計画の専門家も交えて「オール松本」の体制で中核エリアの再設計に取り組むとのこと。

この閉店を損失としてではなく、無理にでも街の新たな可能性を切り開く機会として捉えているようです。松本城や上高地なんかはインバウンド客も多いですしね。

跡地利用の可能性

現時点での跡地利用については、具体的な計画が発表されていません。ただし可能性としては、

  1. 新たな商業施設:地域のニーズに合わせた、より現代的な商業施設の誘致
  2. 複合施設:商業、オフィス、住居などを組み合わせた多機能型の施設
  3. 公共施設:市民の憩いの場となるような公園や文化施設
  4. 観光拠点:松本城と連携した新たな観光スポット

何をするにも、お金がかかりますね。

井上百貨店の歴史、140年の軌跡

創業と発展

1885年(明治18年)、井上与作が松本城の旧城下町の六九(ろっく)通りに井上呉服店として創業。24歳の時に松本の地に商機を見いだし、当時の商業中心地である六九町に店舗を構えました。

1936年(昭和11年)には店舗を近代的な3階建てに改装し、呉服だけでなく婦人服・紳士服、化粧品、雑貨なども販売する百貨店へと発展します。

主な出来事

  • 1950年(昭和25年)3月1日:株式会社井上に改組
  • 1956年(昭和31年):県内初のエスカレーターを設置
  • 1972年(昭和47年):一部改築、冷暖房完備の地上6階建てに
  • 1979年(昭和54年)4月1日:現在地に移転(本館)
  • 1985年(昭和60年):井上創業100周年
  • 2000年(平成12年)10月26日:長野県東筑摩郡山形村にアイシティ21開店

近年の動向

井上百貨店は、松本駅前の本店をはじめファッションやリビング、インテリア等の専門性を持たせた4つの店舗、穂高のセレクトショップを展開しています。

2000年には郊外型ショッピングセンターアイシティ21をオープンさせ、変化する経済構造とショッピングスタイルに対応してきました。

2022年には創業137周年を迎え、2025年1月には「昭和レトロ展」を開催。六九町時代や移転オープン時の様子、当時の広告やポスター、包装紙や女子社員の制服の変遷、昭和20年代に使用していたレジスターなども展示され、多くの人たちの懐かしい思い出を呼び起こしました。

そして2025年(令和7年)3月31日をもって、本店の営業を終了。アイシティ21に集約する予定です。

松本市の新たな挑戦、歩きたくなる街づくりへ

課題と市民の声

松本パルコと井上百貨店の閉店により、中心市街地の活気が失われる懸念があります。井上百貨店跡地の利用計画は未定ですが、新たなテナント導入や専門店を含む事業展開が検討されています。

また、若者が中心市街地に魅力を感じず市外へ流出している点も課題であり、学生や社会人が交流できる施設や学びの場を設ける提案もされています。

提案と取り組み

今後はトラム(路面電車)など公共交通網を充実させて車に頼らない移動手段を提供、住みやすい街づくりを目指すべきという意見があります。

さらに松本駅から松本城までの「中核エリア」を歩行者、自転車、公共交通主体のエリアとして再設計、回遊性を高めて観光や商業機能を集積していきます。

また、跡地には図書館や展示スペースを設けることで、人々が集まる場を創出するという案があります。公園などの既存施設を活用して、イベントや交流を促進するアイデアも挙げられています。

松本市は、公民連携による都市計画に積極的に関与し、商業、観光、交通、住居など多方面から再活性化を進める方針。今年度中には、具体的な提言が行われる予定とのこと。

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