昭和の時代、子どもたちは銭湯で3番の脱衣箱を取り合ったそうです。そう、ミスターの背番号です。ミスターといっても、もちろんドーナツではないし鈴井さんでもありません。長嶋さんです。
すでに現役を知らない我々世代にも、当時を体験した人たちによるモノマネや笑えるエピソードで親しまれた長嶋さん。大人の人たちは平成になっても「長嶋選手」と言っていました。
今回は訃報にふれ、あらためて経歴や伝説的な活躍などを知るべく彼の歩みを振り返ります。
★ もくじ
長嶋茂雄のプロフィール
幼少期
長嶋さんは1936年2月20日、千葉県印旛郡臼井町（現在の佐倉市）で農家の家庭に生まれました。
兄や姉がいる4人きょうだいの末っ子で、当時のスター選手であるセネタース（現在の日ハム）の青バット大下弘選手や初代ミスタータイガース藤村富美男選手に憧れ、幼い頃から野球選手を目指していたそうです。関東地方に住みながら阪神ファンでした。
少年時代
小学生時代はチビというあだ名がつくほど体は小さいながら、運動神経は抜群。6歳年上の兄に連れられて地元の青年団野球クラブ「ハヤテ・クラブ」に入り、小学4年生から本格的に野球を始めました。
中学は臼井二町組合立中学校（現在の佐倉市立佐倉中学校）に進学し、野球部に入部。担任の先生は3年間同じで、生徒からも慕われていましたが、野球に夢中になりすぎる生徒たちに対して「もっと現実的に将来を考えなさい」と厳しく指導したこともあったそうな。
このとき先生の言うことをまともに聞いてたら、後のスターは生まれませんでしたね。
佐倉一高から立教大学へ
高校は佐倉第一高等学校。当時は今ほど目立った存在ではなく、周囲からは社会人野球に進むのではないかと見られていました。
しかし立教大学進学後、六大学野球で開花します。首位打者を2回獲得し、通算本塁打記録も更新。この頃から神宮の星と呼ばれ、プロ野球球団からも注目される存在となります。
プロ入りの経緯
大学卒業後は多くのプロ球団が接触を図りましたが、最終的には読売ジャイアンツへの入団を決意。母親から「せめて在京の球団に」と懇願されたことが決め手となったと言われています。この頃は、たぶん後年ほど巨人人気は高くなかったんですかね。
1957年11月20日に巨人と契約、背番号は3となりました。
プロ野球選手としての長嶋茂雄
読売ジャイアンツの黄金時代を築く
入団後は1年目から本塁打と打点の2冠を達成、新人王に輝きます。その後は首位打者6回、最多安打10回、本塁打王2回、打点王5回など、数々のタイトルを獲得しました。
通算成績は2186試合出場で2471安打、444本塁打、1522打点、打率.305。数字的にはまだ上はいますが、スター性が突出していたのでしょう。
三塁手としても史上最高と称され、ショートゴロをサードから派手な動きで取りにいくなどのプレーで魅了しました。ベストナインには17回も選ばれ、ゴールデングラブ賞も2回受賞しています。
ON砲とV9時代の中心選手
王貞治さんとともに「ON（オーエヌ）砲」と呼ばれ、巨人のV9（9年連続日本一）を支える中心選手でした。400本塁打、2000安打の同時達成は大卒選手として史上初の快挙。
監督就任と苦難のスタート
1974年に現役を引退した長嶋さんは、すぐに巨人軍の監督に就任しますが、最初の年（1975年）は球団史上初の最下位。
しかし翌1976年には見事リーグ優勝を達成。1977年には2連覇も果たし、巨人を再び強いチームへと導きましたが、再び低迷し1980年を最後に退団。
2度目の監督時代とメークドラマ
1993年に再び巨人軍の監督に復帰すると、1994年には同率首位の中日との最終戦に勝利、リーグ優勝と日本一を達成します。1996年には最大11.5ゲーム差を逆転してリーグ優勝し、メークドラマと呼ばれる伝説を作りました。
監督としての通算成績は1982試合で1034勝889敗59分、勝率.538。日本シリーズでは3度優勝しました。
終身名誉監督とその後の活躍
2001年に再度監督を退任した後は、巨人軍の終身名誉監督となり、野球界の発展に尽力しました。2004年にはアテネ五輪の日本代表監督も務める予定でしたが、病気のため断念。2013年には国民栄誉賞、2021年には文化勲章を受賞しました。
長嶋茂雄は何が凄かったのか？
記録だけじゃない、圧倒的なスター性
通算記録では王さんが上回る部分も多いですが、長嶋さんが昭和のスターと呼ばれる理由は、記録だけでなく華や存在感にあります。その頃を知るおじさんたちからは「スター性がずば抜けていた」「記録以上に記憶に残る選手」という声が多く見られます。
打席に立つだけで球場の空気が変わる、そんなオーラを持つ選手。ファンだけでなく、同時代の選手やメディア関係者からも「野球の象徴」として語り継がれています。
独特のキャラクターとユーモア
現役時代から監督時代まで、数々の“迷言”やユニークな行動でも話題に。たとえば「シャワー食べてうどん浴びたら12時になっていた」と遅刻の理由を語ったり、犬の散歩で自分が迷子になり犬だけが帰宅したというエピソードも。
こうした人間味あふれるキャラクターが、老若男女問わず愛された理由のひとつ。なんJや5chでも「宇宙人選手の先駆け」として、今もネタにされ続けています。
そんなんだから周囲からは「感覚だけで打ってる」とか言われがちでしたが、本人は「そんなんで打てるわけないだろ」と、他の選手以上に猛練習していたそうな。