
首相の「日本はこれからレアアースに困らない」という発言に専門家はキレているそうで。こういった資源だけじゃなく、再生可能やフュージョンのエネルギーとかロジスティクス革命とか、技術面はクリアしていてもたいていコストと実用化つまり商用化のとこでつまづいてる。
規制を緩和して動かすべき中枢が老人ばかりで全然進められないってとこに問題がある気がするんですけど、違うんですかね。
ところで、なんとなくはわかるんだけどレアアースって簡単に言うと何?
レアアースとは簡単に言うと何?
レアアースを、ひとことで
簡単に言うと「ハイテク製品を動かすために必要な金属元素のグループ」。ハイテク製品ってのはスマホや家電、風力発電、EVなどで、それらの磁石やらレンズやら電池やらに使われます。
中身はランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15種類に、スカンジウム(Sc)とイットリウム(Y)を加えた17元素。1794年ごろにスウェーデンで発見されたとき「珍しい土のような物質」と考えられ「レア(希少な)・アース(土類)」という英語名がつけられました。
1794年は、天保の改革で有名な水野忠邦が生まれた年です。
で、レアアースってこれだけが固まって出てくるわけではなく、関係ない他の元素に混ざってしまっていることが多い。なので、鉱石からレアアースだけを取り出して、さらに17種類それぞれに分けるには高度な技術とコストが必要なんだそうで。
レアアースとレアメタルの違い
レアアースは「レアメタル(希少金属)」の中の一部であり、31鉱種あるレアメタルのうちの1グループという位置づけ。レアメタルという言葉は非鉄金属全体をまとめた、かなり広い概念です。
たとえば、電池に使われるリチウム(Li)やコバルト(Co)、ニッケル(Ni)などもレアメタルですが、これらはレアアースには含まれません。
レアアースが支える現代の社会
要は、このレアアース、広く地球上に存在するのに取り出すのが難しい。なのに現代の人類に欠かせないというやっかいな存在。
だから今、どの国がどれだけレアアースを持ち、どのように採掘し、環境への影響をどう抑えていくのかが世界的な大きな課題になっていると同時に、政治的な切り札なんかにも使われているわけですね。
レアアースに含まれる放射性物質
レアアースと放射能
レアアースそのものは、ほとんどが放射性ではなく普通の金属。問題になるのは、レアアースが鉱石の状態で放射性物質と一緒に産出することが多い、というとこ。
代表的な鉱石としてモナザイト(monazite)やバストネサイト(bastnäsite)、ゼノタイム(xenotime)があり、モナザイトは特にトリウム(Th)という放射性元素を比較的多く含み、ゼノタイムはウラン(U)を含む場合がある鉱物。
つまりレアアース鉱石は「レアアース+トリウムやウランが混ざった状態」で地層の中に存在していることが多く、そのため採掘や精錬の過程で放射性物質の扱いが問題になるのですね。
採掘・精錬の現場で起こることと我々への影響
レアアース鉱石の採掘や精錬は、ちょいちょい「汚い産業」と呼ばれます。必要とか言いつつ随分な言い草ですけど。
まあ掘り出す際の大規模な地形破壊に加え、粉砕して薬品で溶かしレアアースを取り出す過程で大量の酸性廃液や重金属、そして微量の放射性物質が混ざった廃棄物が生じるのだから仕方ない。
そして、これらの廃棄物は適切に処理・管理されなければ、土壌や地下水、河川を汚染し、周辺住民の健康リスクにつながる可能性だってあるのです。
中国の内モンゴル自治区、包頭(Baotou)近郊のレアアース精錬工場周辺では、大きな廃液の池が衛星写真でも確認され、酸性廃液や重金属、微量の放射性物質を含むという黒い湖が環境問題として報告されてきました。
採掘現場では、ウランやトリウムを含む粉じんが飛び散ることで、作業員が長期間にわたって放射線と化学物質の両方にさらされるリスクも指摘されています。ウシジマくんの債務者みたいな人たちが働かされているかもしれません。
いずれにしても、中国では環境規制の強化や違法採掘の取り締まりが進められている一方、依然として処理コストを抑えるために不十分な対策で運転される施設もあるそうです。
ただし、最終的に製品として我々の手元にあるものは日常生活の中で危険なレベルの放射線を浴びる心配はほぼないそう。
とはいえ、各国ではレアアース資源のリサイクル技術の開発が進められていて、これによって新たな採掘を減らし、放射性廃棄物をはじめとする環境負荷を小さくしようと取り組くんでいます。
中国依存からの脱却と国産レアアース|多額の国家予算を使う意味は?
資源リスク
レアアースはベトナムやブラジルの地にもいっぱい埋まってますが、量や価格の安さは中国が圧倒的。日本は長年にわたって中国に依存してきて、ある時期には輸入量の6割以上が中国からでした。
その中国は、時に対立する国へ輸出規制や数量制限を行って、資源を外交カードとして使ったりします。
これは経済安全保障と言って資源のある国が持つ血の出ない武器であり、買い手側が「安くて便利だから」と特定の国に任せきりにすると変な政治家の発言ひとつで簡単に均衡が揺らいでしまうというのはご承知のとおり。
南鳥島(国産)レアアース
南鳥島は、東京都心から南東へ約1900キロ離れた太平洋の孤島。この島の沖合の水深6000メートルのとこにレアアースを大量に含んだ泥が広がっていることが、東大などの研究チームによって報告されてきました。
しかもその中には重希土類と呼ばれるジスプロシウムやテルビウムなど、世界的に不足しがちな元素が非常に多く含まれているらしく。そしてその量は、日本の需要の数百年分、元素によっては400年分以上に相当するとかしないとか。
そのため、中国に支配されているレアアース市場のゲームチェンジャーになりうると期待する声もあがっています。
また環境面でも、陸上の鉱山には放射性元素や有害物質が多く含まれる一方、南鳥島の泥は魚の鱗や骨由来のリン酸カルシウム(アパタイト)に濃縮されており、放射性元素をほとんど含まないクリーンな資源なのだそうで。
多額の国家予算を使う意味
政府や関係機関は、2028年度以降の産業化・商業化を目指すロードマップを描いています。うまく進めば、輸入に頼る資源小国から供給側に回れるわけで。
ただし、このプロジェクト、探査船の運用費、システムの開発費、環境影響の調査や精錬技術の研究費など巨額のコストがかかります。陸上鉱山と比べて圧倒的にコスト高になるため、民間企業だけでは手を出しにくい。
なので「掘れば掘るほど赤字になるのではないか」という見方も少なくありません。埋蔵量が多いことと採算が取れることは別問題。
もちろん深海の資源開発は技術と産業の育成という形でもリターンを生みうる投資だし、将来の海洋資源ビジネスで優位に立つ足がかりにもなりえます。
しかし将来的に世界全体でリサイクルや脱レアアースの技術が進み、需要そのものが想定より伸びない未来も考えられる。そうなれば「利益が上がらないのに維持費だけがかかる国家プロジェクト」になる危険もあります。日本による、アフリカのナミビアにある鉱山の開発計画もあるし。
結局「これからレアアースに困らない」なんて大風呂敷を広げる前に課題はいっぱいあるわけで、まずは力を持った国に余計な刺激を与えないことが得策かと思います。

