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スペイン水中洞窟サ・ピケータ事故の全貌|60時間、奇跡の救出劇

スペイン水中洞窟サ・ピケータ事故の全貌|60時間、奇跡の救出劇

洞窟の事故と言ったら、なぜか映画やドラマなど何度も映像化されたタイのタムルアン洞窟、少年サッカーチームの事故が有名です。それより思い出されるのが、あの不気味な「岡山地底湖行方不明」のやつ。

それはそうと冒険家全般に言えることですが、堅気の人間からすると「なんでわざわざそんなとこに?」という思いが強くあります。しかしさんざん世間を騒がせたあげく、まだ彼は「水中洞窟への情熱は消えない」と語っているそうです。全然こりてません。

サ・ピケータ洞窟で起きた緊急事態

洞窟の概要

サ・ピケータ洞窟はスペインのマヨルカ島にある水中洞窟で、無数の空洞と迷路のような複雑な内部構造が特徴。

入り口から奥まで約1キロもあって、水中を長時間進まなければなりません。洞窟内は水の流れがほとんどないため泥が舞い上がると視界が一気に悪化し、迷います。

エアドームと呼ばれる空気が存在する空洞もありますが、酸素濃度が低く二酸化炭素が高いため長時間の滞在は困難。最悪です。人間が行くところじゃありません。

調査ダイブからの緊急事態

2017年4月、地質学者のシスコ・グラシアとバディ(相棒)のギレム・マスカロは、洞窟の地図作成と岩石サンプルの採取を目的にサ・ピケータ洞窟へ潜りました。2人ともケーブダイビング歴20年以上のベテランで、十分な装備と予備の空気を持って調査に臨みます。

タムルアン洞窟のドラマで言ってたけど普通の海とか軍のダイビングと洞窟のダイビングは全然技術が違うらしい。

そして調査開始から約1時間半後、2人は入口から奥深い約1kmの地点で合流しますが、その際にフィンが地底に触れてしまい砂や泥が舞い上がって一瞬で視界がゼロに。洞窟内はもともと真っ暗なわけで、ライトがあったところで泥が舞うと何も見えなくなります。

さらに、帰り道の目印となるワイヤーが岩にこすれて切れてしまいました。これにより、2人は出口へのルートを完全に見失いパニックになりかけます。焦りから呼吸が荒くなり、空気の消費も早くなってしまいました。

絶体絶命の選択

このままではマジ死ぬぞと判断した2人は、洞窟内にあるエアドーム(空気が吸えるスペース)へ向かいます。記憶を頼りにエアドームにたどり着きましたが、そこは二酸化炭素濃度が非常に高く酸素は地上よりも薄い危険な場所。

同じ場所に留まれば限られた酸素のせいで2人とも危険な状態になるため、グラシアさんはエアドームに待機することを選択。マスカロさんに救助要請を託しました。

通常、我々が吸っている空気の二酸化炭素濃度は0.04%ですが、洞窟内では5%。持っていた懐中電灯の電池も残り少なく、ほとんどの時間を真っ暗な中で過ごしたグラシアさんは、徐々に頭痛や極度の疲労、幻覚に悩まされるようになります。

幻覚とは、そこに無いものが見えること。こえー。

酸素が尽きたとき、ゆっくり死ぬのではなく「早く」死ねるようにナイフを手元に置いていたそうな。

60時間の大規模救出作戦

大規模な救出活動

マスカロさんは危険を冒して1kmの暗闇を泳ぎ、なんとか洞窟から脱出し、救助を要請。救助チームはGEAS(スペイン国家警察水中活動班)を中心に編成され、地元ダイバーや海軍特殊部隊も参画しました。

60時間に及ぶ救出劇

最大の難関は、濁水。救助隊の活動で舞い上がる泥が視界を遮り、1回の潜水で進める距離が10m以下になることもありました。最終的には、地元ダイバーの知識を突破口としてグラシアさんの待機位置を特定するのに成功。

救出後グラシアさんは体温が32度まで下がる低体温症の危険もあってすぐに病院に運ばれ、2人は奇跡的に命を取り留めることができました。

生還後

生還後の心境とその後

事故から1ヶ月後、グラシアさんは再びサ・ピケータ洞窟を訪れ、自分が閉じ込められていた空間にも戻りました。「洞窟に恨みはありません。洞窟のせいじゃありませんから」と語るなど、ダイビングへの情熱は失っていません。

いや、そりゃあいいんですけど、こんな言葉より、ちゃんと助けてくれた人たちに菓子折り持って挨拶したのか気になります

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