
日本では、コーヒーを苦いままのブラックで飲むことがオトナでカッコいいという奇妙な風潮があります。
しかし海外でブラックコーヒーを注文する際は「No sugar, no milk」と明確に伝える必要があるほど、純粋なブラックコーヒーは一般的ではありません。カフェインのないDecafの方がメジャーなイメージ。
Netflixで配信中のドラマ『さよならのつづき』は、主軸はラブストーリーなんですけど、一方で「コーヒーが苦手だった成瀬くんがコーヒー好きの雄介くんから心臓を移植してもらった後にコーヒー好きになる」という記憶転移の話でもあります。
これを観ていると「記憶転移って、本当にあんの?」という疑問が浮かびます。
これまでも、このドラマ以外に記憶転移を描いた作品はいろいろあるのは、現実世界でも似たような事例が報告されているから。実は、科学の世界では割と真剣に研究している人も少なくないテーマだったりするのでした。
★ もくじ
記憶転移があるかも、と思わせる事例集
一番有名な、クレア・シルヴィアさんの事例
クレア・シルヴィアさんは、元プロダンサー。1988年、47歳の時に心肺移植を受けたんですが、手術後は嫌いだったピーマンやチキンナゲットなどが好きになっていました。ほかにも色の好みが変わったり、攻撃的で衝動的な性格が現れるように。
移植から5か月後、彼女はティム・Lという若い男性の鮮明な夢を見ます。
彼が臓器提供者なのではないかと感じ、自身の調査によってついにドナーが、メイン州でバイク事故で亡くなったティム・ラサールという18歳の男性であると特定しました。術後の変化は、もともと彼の性質だったとのこと。
1996年には回想録として「A Change of Heart」を出版しました。
臨死体験研究ジャーナル
以下の事例は、研究者のポール・ピアソール、ゲイリー・シュワルツ、リンダ・ラセックによって、臨死体験研究ジャーナルに掲載されたものです。この雑誌は、臨死体験研究の分野に特化した季刊学術誌という非常にマニアックなもの。
- ダニエルという名の18歳の心臓移植患者は、ドナーが作った歌(世間に知られた曲ではない)を一度も聞いたことがないにもかかわらず、その歌のフレーズを最後まで言うことができた。
- 軽度の脳性麻痺を患う生後16ヶ月のドナーから心臓を移植された7ヶ月の男児は、移植後に脳性麻痺の症状を示し始めた。これは、移植前には見られなかった症状である。
- 若い心臓移植患者は、使用された武器やドナーの衣服、犠牲者の最後の言葉など、ドナーの死に関する正確な詳細について語ったが、後にそれが正しいことが確認された。
- 心臓移植患者は、手術直後から「copasetic(めっちゃ満足)」という言葉を使い始めたが、これは彼がそれまで使ったことのない言葉で、ドナーが好んでいた言葉だった。
海に住む軟体動物、ジャンボアメフラシの記憶に関する実験
UCLA(有名なカリフォルニア大学ロサンゼルス校)の科学者らは、アメフラシ同士の記憶伝達を実証する実験を行いました。
尾の刺激に対して防御反射を示すよう訓練し、その後これらの訓練された動物からRNA(DNA同様、細胞に存在する化合物)を抽出、訓練されていないアメフラシに注入したのです。
そうすると、訓練された個体からRNAを受け取ったアメフラシは、訓練されていないヤツ同様の防御反応を示しました。
このことから記憶はRNA分子に物理的根拠がある可能性があるかも、と言えるわけなんですけども。
それよりも、こんな言い方はアメフラシに対して失礼かもしれませんが、なぜマウスとかじゃなくてこんなよくわからないマイナーな生物を実験に使ったのか、という新たな疑問がわいてきて眠れなくなりました。
寝る前にカフェインは摂らない、スマホは見ない、を実行しているのですが。
記憶転移の科学的検証ポイント
記憶形成に関与する脳領域の特定
脳内で記憶が作られる領域には、作成と保存に役立つ「海馬」や感情的な記憶に関与する「扁桃体」、事実や情報を記憶するのに役立つ前頭前野が知られています。
ただ、これら脳と同じように心臓にも、記憶を保存する独自の特別な細胞やシステムがあるのかっていう話。まあ現時点では、ほとんどの科学者に受け入れられていません。
第三者にしてみれば、ちょっとロマンチックな話でもあるので、映画やドラマの企画にはしやすいのかもしれませんが。
「転生」と同じような心理的な思い込み
多くの専門家は、記憶転移の例は心理的要因が大きいと考えています。
臓器を移植された人は、ドナーと深いつながりを感じて、特徴を共有している感覚になったり感謝したりすることで、同様の興味や行動をとるようになって、記憶を共有しているように感じる、と。

量子もつれ、とか?
とまあ、そんなふうに「臓器に記憶などあるわけないわ」と考えるのが普通だと思うのですが、ここで登場するのが「量子もつれ」ですよ。
「量子もつれ」とは、素粒子の世界では、どんだけ離れていてもコンビ同士がお互いに繋がっているという不思議な現象のことです。
たとえるなら、芸人のコンビの片方が日本の大阪でボケている時、同時に南米ウルグアイのモンテビデオにいる相方が、スマホなどの通信手段をいっさい使わずそのボケにツッコんでいるような状態。
この古典物理学では考えられないような現象を、1982年にフランスの物理学者アラン・アスペ氏が、実験によって証明しました。
つまり、心臓を構成している細胞の組成である素粒子が、脳の組成である素粒子に同じ体を通じて影響している、という可能性もなくは無いんじゃないかってことですね。
実際、研究者のジム・タッカー博士は「量子物理学が生まれ変わりを理解するための手がかりになるかもしれない」と示唆しています。