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デナリ山の名前の由来とは?大統領令でコロコロ名称を変えられるかわいそうなマッキンリー山

世界五大陸の各最高峰は、以下の通り。

  • [アジア大陸]エベレスト(8848m:中国、ネパール)
  • [ヨーロッパ大陸]エルブルス山(5642m:ロシア)
  • [北アメリカ大陸]デナリ(6190m:アメリカ)
  • [南アメリカ大陸]アコンカグア(6962m:アルゼンチン)
  • [アフリカ大陸]キリマンジャロ(5895m:タンザニア)

この中の最高峰であるエベレスト(英語名)には別名が2つあり、珠穆朗瑪峰/チョモランマ(中国名)とサガルマータ(ネパール名)として知られています。感覚的には静岡と山梨で富士山を取り合っているようなものでしょうか。

新大統領が、北米最高峰の名前を「デナリ山」から「マッキンリー山」に戻したみたいです。オバマさんが長年の論争に終止符を打ち、せっかくデナリ山に改名したものを一声であっさり変えやがりました。

この山の名前には長い歴史があって、先住民の文化や政治家の思惑、そして現代のアメリカ社会の価値観が複雑に絡み合っているのです。

デナリ山の名前の由来

先住民の言葉「デナリ」の意味とは?

デナリは、アラスカの先住民であるデナッイナ族の言葉で「大きな山」という意味。近くに住むコユコン族の言葉では「高きもの」「偉大なるもの」を意味する「Deenaalee」と呼ばれていました。

先住民の人たちにとって、この山は単なる地形じゃなくて、畏敬の対象だったんですね。人間より圧倒的な力の存在をバカでかいものに投影してきたという歴史は、我が国の大仏なんかを見てもわかるでしょう。

アラスカの人々にとってのデナリ山の意味

アラスカの人々にとって、デナリ山は特別な存在。地元の人たちは昔からこの名前で呼んでいて、山への愛着や敬意がすごく強い。

例えば、アラスカ州知事のビル・ウォーカーさんは「アラスカにある場所の名前は、州の豊かな文化や歴史を反映し尊重したものであるべき」って言ってます。つまりデナリっていう名前は、アラスカの人たちのアイデンティティや誇りにもつながってるってことですね。

北海道の地名にアイヌ語が多いのは、そこまで深い意味はなさそうですけど。

でも、もし石破さんが昔の首相にならって富士山を「アベノ山」に改名する、としたら内戦が起こりますよね。地元の人たちにとって、デナリ山は単なる山じゃなくて文化のシンボルみたいなものなんです。

マッキンリー山への改名の経緯

なぜマッキンリー大統領の名前が付けられたのか?

1896年、ある採鉱者がこの山を見つけ、当時の大統領候補だったウィリアム・マッキンリーさんの名前を付けました。これが「マッキンリー山」の始まりです。

マッキンリーさん自身は一度もアラスカに来たことがなかったのに。彼は、大統領としてアメリカの帝国主義的な外交路線を確立し、国際舞台での影響力を拡大させた人。

だから、当時としては彼の名前を山に付けることで、アメリカの偉大さを表現しようとしたんでしょうね。今となっては強引な印象しかないけど、その時はそういう時代だったというのは理解できる。

連邦政府による正式名称の決定

1897年、連邦政府が正式に「マウント・マッキンリー」という名前を認めてしまいます。これで、先住民の呼び名だった「デナリ」は公式には使われなくなっちゃいました。

でも、地元の人たちは「デナリ」と呼び続けました。何百年も使ってきた名前を、急に無関係の大統領の名前に変えろって言われても無理です。そんな感じで、国の公式名称は「マッキンリー山」だけど、地元では「デナリ」って呼ばれ続けてはいたんです。

デナリ山への改名と論争

アラスカ州による名称変更の要請

アラスカの人たちは、ずっとデナリって呼んでいたので「マッキンリー山」っていう名前には違和感があったんでしょう。1975年からアラスカ州政府は連邦政府に「デナリに戻せ」と、訴え始めました。

オバマ大統領による名称変更の決定

そして、ついに2015年8月30日、バラク・オバマ大統領が動きました。

これで丸く収まるかというと、もちろんそうではなく。マッキンリー大統領の出身地、オハイオ州の人たちが怒り出しました。州の誇りみたいなものを傷つけられたという主張のようですが、オハイオがアラスカに口出す方が筋が通らないと思うんですが。

たかがネーミングですが、文化の違い、歴史の重み、政治的な思惑で、こんなにも複雑な問題が起きるのです。

トランプ大統領による再改名

マッキンリー山への改名の理由

そして、2025年1月20日。ドナルド・トランプさんが大統領に再び就任すると、デナリ山の名前をマッキンリーに戻す大統領令に署名しました。

トランプ氏はマッキンリー大統領のことを「彼のリーダーシップのもと、アメリカ合衆国は急速な経済成長と繁栄を享受した」と言っており、この名前はアメリカの偉大さを象徴するものなのでしょう。

でも別に、無関係のアラスカの山に名付けなくてもよくない?と思うのですが。最高峰のせいなのか。

デナリ山の特徴と魅力

北米最高峰としての存在感

ここまで名前の話ばかりでしたが、山そのものの魅力も忘れちゃいけません。まず、標高6190.4mは北米大陸最高峰。しかも、麓からの高さの差が5500メートルもあり、これはエベレストよりも大きな比高です。

比高ってのは、ある地点から別の地点までの垂直方向の高さの違いのこと。登山で使うとすれば、海水面からの高さを指す標高ではなく、登山口のあたりから頂上までの高さです。

厳しい気候条件と登山の難しさ

高いということは、猛烈寒い。夏でも山頂の平均気温は−20℃くらい。それはもう夏とは言いませんね。そして冬には−59.4℃を記録したこともあります。さらに、風は最大時速160キロ。これ、台風並みの風速。立つのもつらい。

なので、登山シーズンは4月後半から7月中旬だけ。それ以外の時期に登ろうとすれば命の危険あり。いや普通にシーズン中でも命の危険があると思われますが、毎年400人から800人くらいのモノ好き登山者が訪れています。

デナリ山にまつわるエピソード

有名な登山家たちの挑戦

デナリ山には、たくさんの登山家が挑戦してきました。

人類で初めてデナリ山の頂上に立ったのは、1913年。ハドソン・スタックとロバート・テータムという司祭(神父)と、ハリー・カーステンス、ウォルター・ハーパーの4人でした。

その後、1947年にはバーバラ・ウォシュバーンが女性で初めて頂上に到達しました。

日本人登山家との関わり

あとは日本の冒険家、植村直己さんのエピソードも有名ですね。植村さんは1984年、デナリ山で行方不明になりました。世界中の山を征服してきた植村さんが、最後に挑んだ山がデナリ山でした。

デナリ山は、植村さんの最後の挑戦の地として、日本人にとっても特別な山になっています。

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