
当時「今後75年は草木も生えぬ」と言われた広島長崎同様、チェルノブイリでも同じようなこと言われていました。しかし事故から今年はちょうど40年、世界を震撼させた大惨事の跡地は動植物の楽園になっているとかいないとか。
自然は強大で、人間がどうこうできる相手じゃないってことがわかりますね。
余談ですが、近年では過去に起きた数々の事故の教訓を活かし革新的なエネルギー施設が実現しつつあります。
小型原子炉、略してSMR(略さなければSmall Modular Reactor)は工場で作って現場に運べるほどコンパクトで、自然冷却により事故リスクをぐっと下げたもの。韓国の斗山重工業がアメリカで認証を取ったり、中国の華龍1号が運転開始したりと世界では実用化が進行中。
一方で核融合炉は太陽の仕組みをまね、クリーンで無尽蔵のエネルギーを生み出す装置。フランスのITER(国際熱核融合実験炉、International Thermonuclear Experimental Reactor)プロジェクトは34カ国が協力し、2034年の本格稼働へ向け動いています。
日本語にすると「原子炉」とか「核」とかいう言葉が付いているため無意味にビビる人がいるみたいですが、別物なので心配無用。
立ち入り禁止区域の広さとルール
ウクライナとベラルーシにまたがり「レッドフォレスト」と呼ばれるこの区域は、当時まだソ連でした。総面積は約4000平方キロメートルで、ロンドン市街の2倍以上の広さ。原発から半径30キロ以内が中心で、プリピャチ市のような街がそのまま残っています。
立ち入る方法
こう見えて一応入ることもできますが、許可が必要でツアー会社を通すのが一般的。1日ツアーならチェックポイントでパスポートを見せ、注意事項にサインします。10キロと30キロの2ヶ所で検査が入り、写真撮影の制限あり。住むのは一部住民だけで、年間最大数週間です。
区域内は人間様がいなくなったおかげで、静かな時間が流れています。かつて村だった92ヶ所と2万2000人分の生活は消えましたが、それが自然の復活を後押し。放射線量は場所によりまちまちで、赤い森のような高汚染地帯もありますが、土壌生物は影響を受けにくいそうです。
研究者たちはカメラやヘリで監視を続け、回復の様子を記録。ヨーロッパヤチネズミは抗酸化物質を増やして耐え、ツバメの白化も一部見られますが、全体として生命は強い。人間の影響がなく森が深みを増していく様子は、忘れられた楽園とも言われています。
立ち入りのためのルールは安全第一で定められていますが、科学者や観光客が訪れることで世界にその姿を伝えています。
放射線量の今と変化
事故直後は致死レベルの高さでしたが、40年が経ち低下傾向。赤い森は今も汚染がきついものの、土壌の微生物は元気です。動物の分布に、放射線が直結しないデータも。
とにかく、この地は人間不在のおかげで回復が進みヨーロッパ最大級の自然保護区に変貌しました。過去の被害として出生率低下や突然変異などもありましたが、全体の豊かさが勝っているのだそう。
研究チームのジェームズ・ビーズリー教授らは、カメラ調査で14種の哺乳類を確認。皮肉なもんで、人間のいない空間が生命の多様性を呼び戻したのでした。
植物も目覚ましい回復
赤い森から蘇る緑の力
赤い森は、事故で松の葉が赤く変色し全滅。しかしキノコやシダが放射性セシウムを吸い、土を浄化しました。植物は動かずストレスに耐え、根元の微生物が成長を助けます。
その結果チェルノブイリ全体で森林が深まり、街路樹が野生化。ビーバーがダムを作り、水辺を生む光景も見られます。プリピャチの遊園地フェリスホイール周りも、ツタが絡みつく神秘的な姿に変わりました。
かつての街を覆う雑草と、森の広がり
放置されたアパートの窓から木の枝が伸び、道路は草に埋もれました。シダ植物は放射能を溜め込みやすい性質で、浄化役に。ビゾンや馬の生息地も拡大し、植物もそれに合わせ進化。さらに、土壌のバクテリアが植物の根を守ります。
動物たちが増え続ける楽園
オオカミやイノシシの爆発的増加
オオカミの群れ、野生のウマ、キツネ。ハイイロオオカミの数は周辺保護区の7倍で、イノシシ、シカ、ノーロック鹿などもいっぱいいます。プリゼワルスキー馬は1998年の再導入から大繁殖し、200種の鳥も。さらにヨーロッパヤチネズミが抗酸化で耐性獲得。
人間の狩猟や開発が無いため、捕食者の頂点にはオオカミが君臨。夜の咆哮が森に響いています。
クマやリスなども
クマやリンクス、バイソンなんかも帰還しました。犬の群れも増え、遺伝子研究が進められています。死亡率の高かった高汚染地も回復し、モーションカメラで14種が確認されました。
要するに、この動物パラダイスは人間がいなくなると生命がどれだけ弾けるかということ。チェルノブイリ立ち入り禁止区域は、今や植物や動物が主役の大地へと変貌したのでした。
