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英国推理作家協会の文学賞で注目〈王谷晶〉|経歴や代表作品など

英国推理作家協会の文学賞で注目〈王谷晶〉|経歴や代表作品など

アガサ・クリスティやアーサー・コナン・ドイルを生んだ国、イギリス。この国の団体である英国推理作家協会(CWA)主催の文学賞に関するニュースで、我が国の作家である王谷 晶(おうたに あきら)さんが話題です。

写真を見て、そのビジュアルのインパクトに興味を持った方も多いことでしょう。そこで、王谷晶さんの経歴や代表作について調べてみましたよ。

王谷晶の経歴と、作家としての歩み

基本情報

1981年生まれ、東京都出身の小説家・エッセイスト。2012年に作家デビューして以来、さまざまなジャンルで活躍しています。

  • 生年:1981年
  • 出身地:東京都
  • 職業:小説家、エッセイスト
  • 活動開始:2012年
  • 代表作:『ババヤガの夜』『完璧じゃない、あたしたち』など

作家デビューまで

子どものころから本好きで、学校をサボり読書にふける日々を送っていました。中学生のころからは推理小説やSF、BL(ボーイズラブ)など幅広いジャンルに親しみ、自分でも物語を書いていたんだそうで。

高校時代には同人誌を出したこともあり、将来は自然と作家になるだろうと感じていたらしい。20代はバイトしながら特に賞への応募などはせず、30歳を過ぎた頃に焦り始めて本格的に執筆を始めます。

デビューのきっかけは、ネット上で知り合った編集者に「小説書くので仕事ください」と自ら営業したこと。当時は電子書籍やゲームシナリオの仕事が増えていた時期で、携帯ゲームのシナリオライターとしても活動します。

そうして出版業界やゲーム業界の知り合いが増え、ノベライズやキャラクター文芸などを執筆。徐々に作家としての道が開けていきました。

作風と特徴

王谷さんの作品は、女性同士の友情や恋愛、現代社会のリアルな悩みや葛藤を描くことが多いです。特に『完璧じゃない、あたしたち』では、さまざまな女性の関係性を自由な発想で描き、読者から高い評価を受けました。

また『ババヤガの夜』では、暴力やバイオレンスをテーマにしつつも、女性同士の連帯や強さを描いています。文章を書くときは、まず頭の中で映像を思い浮かべてから、それを文章に変換するとのこと。

王谷晶の代表作と受賞歴

小説

『猛獣使いと王子様 金色の笛と緑の炎』(2012年、一二三書房)※デビュー作
『あやかしリストランテ 奇妙な客人のためのアラカルト』(2015年、集英社オレンジ文庫)
『探偵小説には向かない探偵』(2016年、集英社オレンジ文庫)
『完璧じゃない、あたしたち』(2018年、ポプラ社/2019年、ポプラ文庫)
『ババヤガの夜』(2020年、河出書房新社/2023年、河出文庫)
『君の六月は凍る』(2023年、朝日新聞出版)
『他人屋のゆうれい』(2025年、朝日新聞出版)
『父の回数』(2025年、講談社)

エッセイ

『カラダは私の何なんだ?』
『40歳だけど大人になりたい』

受賞歴・ノミネート

2021年『ババヤガの夜』が第74回日本推理作家協会賞長編部門の最終候補
2025年、同作の英訳版が英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞を受賞

英訳で海外読者にも広がる王谷晶の魅力

英訳で世界に広がる「ババヤガの夜」

2024年に英訳され「The Night of Baba Yaga」として海外で出版された本作。この英訳版は、イギリスの権威ある英国推理作家協会賞「ダガー賞」の翻訳部門で、日本人として初めて受賞。世界中に注目される存在となりました。

海外読者が感じた王谷晶作品の魅力

独特な文体とリズム

英訳を担当したサム・ベット氏は、王谷さんの独特な文体やリズムを英語でも自然に再現することに成功。英語圏の書評では「ストリートと詩性が交差する文体」と評されています。

女性同士の連帯と社会問題

物語の中心には、暴力団の会長の娘を護衛する女性である新道依子と、その娘との関係が描かれています。

単なるアクションや暴力だけでなく、女性同士の連帯やジェンダー差別、ミソジニー(女性蔑視)といった現代的な社会課題が重層的に描かれている点が、海外の読者にも強く響いているみたい。

クィア(LGBTQ)要素の新しさ

『ババヤガの夜』は、英語圏の日本文学翻訳では珍しい、クィアな女性同士の愛や葛藤を描いています。英語圏の書評では「英訳された日本文学で、こうしたクィアなキャラクターが主役になるのは稀」と評価されました。

ちなみにクィア(Queer)とは、もともと英語で「風変わりな」「奇妙な」といった意味を持つ言葉ですが、現代では既存の性や恋愛の枠組みに当てはまらない人々や性的マイノリティ全体を指す総称として使われています。

暴力と優しさのコントラスト

物語には激しい暴力描写やアクションが多く登場しますが、その一方で登場人物たちの優しさや繊細な心の動きも丁寧に描かれています。海外の書評では「激しい暴力と素晴らしい優しさが交互に訪れる」といった感想が多いです。

英訳による新たな評価と反響

英訳版は、なんと刊行から2週間で重版が決定、イギリスやアメリカの書店でも話題となりました。「The Times」や「The Guardian」などの有力メディアでも「怒り、ユーモア、スリル満載」「激しい暴力と優しさの交錯」と高く評価されています。

海外の読者からは「クィアな女性の物語が新鮮」「日本の裏社会を舞台にしたスリリングな展開が面白い」といった声が多く寄せられています。

王谷晶の創作姿勢と国際的な意義

王谷作品の英訳によって、こうした日本独自の社会問題や女性のリアルな痛みが、国境や言語を越えて多くの海外読者に伝わりました。

これまで川端康成や村上春樹のような文学作品が中心だった日本文学の海外進出に、新たなジャンルと多様な価値観をもたらした存在と言えましょう。

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