
妻夫木さんが演じる八木さんが、最近株価上昇で話題の「サンリオ」創業者である辻信太郎氏がモデルだということは、以前から鋭い特定班たちの間で噂になっていました。どうやら確定っぽいです。
サンリオってアニメなんかの作品が特に大当たりしたというイメージは無いので、キティさんをはじめとするキャラクタービジネスで世を席巻した点が素晴らしきかな。昭和一ケタ生まれの辻さんは、今でも現役の会長職です。
空想の生き物なんて、子ども時代はみんな作ると思いますけど、大人なのにそういうの生み出してるとか、もうホントに住む世界が違いすぎてうらやましい。
★ もくじ
「辻信太郎」と「やなせたかし」の出会いのきっかけ
きっかけは、陶器展とパッケージデザイン
1965年(昭和40年)、やなせたかしさんが46歳のとき銀座松屋のギャラリーで開かれた陶器展が、辻信太郎さんとの初めての出会いの場となりました。たかしさんは、その陶器展でコップに自作の詩を書いてみたところ、それが爆売れしたそうです。
この作品に感動した株式会社山梨シルクセンター代表取締役社長(当時)の信太郎さんは、たかしさんにお菓子のパッケージデザインの仕事を依頼します。
具体的には不二家のキャンディ容器を考えてほしいという依頼で、たかしさんは麦わら帽子の形をした陶器をデザイン。この仕事を通じて、2人は仲良しになりました。ほっこり。
共通点は、詩や文学が好き
たかしさんと信太郎さんには、強い共通点がありました。それは「詩&文学好き」ということ。信太郎さんは学生時代、西条八十が創刊した詩誌「蝋人形」を愛読し、ゴーリキーやアンドレ・ジイドなどの海外文学も読みまくっていた文学青年でした。
たかしさんもまた井伏鱒二の詩集が大好きだったことから、お互いに詩や文学について語り合える仲へと発展。そのため、すぐに意気投合、仕事だけでなく友情も深まったのです。
やなせたかしとサンリオとの関係
外部クリエイターとして参画
たかしさんはサンリオの初期の活動において、外部クリエイターとして企画に参加していました。信太郎さんは「かわいい文化」の土台を作るべく多くの漫画家や芸術家に声をかけ、サンリオの展開の一部を任せていたのです。
その中には、のちに大きな成功を収める水森亜土さん、田村セツコさん、トシコ・ムトーさんなども含まれていました。
詩の出版という新たな挑戦
信太郎さんは、当時まだ小規模だった自身の会社「山梨シルクセンター」で、たかしさんの詩集『愛する歌』を出版しようと考えました。
社員や銀行、周囲からは猛反対を受けたそうですが、信太郎さんは「絶対に迷惑はかけないから」と説得し、出版部門まで創設。その第1号の出版物がやなせたかし著『愛する歌』となります。
この出来事が、後にサンリオの出版部門設立、さらにたかしさんの詩雑誌『詩とメルヘン』の誕生へとつながっていきます。
仕事の縁が運命的な友情へ
初めは仕事の依頼というかたちで会った2人でしたが、共通する文学への愛情やモノ作りに対する情熱がきっかけとなり、深い友情が生まれました。
たかしさんの才能をいち早く見抜いた信太郎さんは、結果的に「アンパンマン」や「ハローキティ」といった、日本を代表するキャラクター文化の礎にも関わることとなったわけです。
ドラマ「あんぱん」と現実の関係の違い
ドラマ『あんぱん』の「たかしと八木」の関係
ドラマ『あんぱん』では、柳井嵩が軍隊に従軍し、そこで上等兵の八木信之介が登場します。
物語の中で八木は、厳しくも思いやりのある先輩として嵩に対して理不尽な仕打ちが向かわないよう配慮したり、詩や文学に共感する一面を見せたりと、嵩の心に大きな影響を与える人物です。
軍隊という過酷な環境下で、八木は嵩の内面を理解し、そっと背中を押してくれる存在として描かれています。
ドラマの途中からは、八木が経営者として登場。嵩やヒロインののぶを再び支援する展開があり、嵩の人生に大きな転機を与える重要な役割を持った人物となっています。見た目だけでなく中身もイケメンです。
現実の「やなせたかしと辻信太郎」の関係
一方、現実のやなせたかしと辻信太郎(サンリオ創業者)の関係は、主に戦後の文化活動と出版、そして実業家としての友情や協業が中心になります。
前述のとおり、たかしさんと信太郎さんが初めて出会ったのは1960年代。信太郎さんは、たかしさんの文学的、芸術的な価値を見抜き、事業を通して支援を惜しみませんでした。たかしさんもそのことに深く感謝し、生涯にわたり親交を続けます。
2人は「実業家と詩人兼芸術家」という関係であり、特に文化活動においては対等な協力者という立ち位置でした。
というわけで、具体的な違いリスト
ドラマ『あんぱん』の嵩と八木
- 軍隊という過酷な環境下で出会い、心の支えとなる上官と部下の関係
- 八木は嵩の人生に直接的な転機を与え、物語の核となる人物
- 時代背景は戦中・戦後、理不尽な軍隊の中で互いに支え合う
- 後半で八木は嵩を経営的・社会的にもサポートする役割
現実の、やなせたかしと辻信太郎
- 戦後に初対面、出版や文化事業を通して協力、実業家と詩人・芸術家のパートナー関係
- 辻は、やなせの詩や作品の価値を見出して後押し、やなせの作家人生に間接的に多大な影響を与えた
- 時代背景は高度経済成長期~現代、出版や文化活動で協力
- 事業を通じてやなせの夢を実現し、サンリオのメルヘン文化を推進
このように、ドラマ『あんぱん』では「たかしと八木」が人生の局面で深く結びつく構造ですが、現実の「やなせたかしと辻信太郎」は、お互いの才能と価値観を尊重しながら、それぞれの分野で支え合うパートナーとして描かれている点が大きく異なります。
まぁ言うまでもなく朝ドラは「実話をもとにしたフィクション」です。