「終りに見た街」というドラマがあります。昭和の人気脚本家で作家でもある山田太一氏の、SF要素を含む歴史小説です。テレビやラジオで3回ドラマ化され舞台上演も行われた人気作品で、2024年の最新版では大泉洋が主演、宮藤官九郎が脚本を担当します。
ストーリーは、ある日突然昭和19年6月にタイムスリップした家族が戦時下をどう生き抜くかを描いており、衝撃的な結末が特徴。そこで
- ラストシーンはどんな内容?
- 原作と違う点はあるのかな?
- 現代社会への警鐘って何のこと?
といった疑問を、ネタバレを混じえて以下簡潔に語ります。
★ もくじ
「終わりに見た街」のあらすじ
現代から1944年へ突如タイムスリップする家族
それぞれの回によって主人公の名前や職業が違ったりしますが、核としては、東京郊外で平凡な日常を送る男とその家族が、まったく理不尽な感じで昭和19年6月にタイムスリップしてしまうところから始まる話です。
戦時下の東京で直面する生活の困難
昭和19年といえば太平洋戦争の真っ最中であり、電化製品三種の神器(テレビ、洗濯機、冷蔵庫)や3C(カラーテレビ、クーラー、クルマ)どころか食料すら入手しにくいありさまで。
何より周りの国民たちの思想が「鬼畜米英天皇陛下万歳ぜいたくは敵だ一億総玉砕」なのがキツかったのではないかと。
未来の知識を持つ者の葛藤と選択
敗戦の日とその後を知っている主人公と一緒にタイムスリップした友人は、その日まで何とか耐え抜こうと必死に生きます。ところが、友人の反抗期の息子がその時代に洗脳され入隊してしまうわ、3月10日に亡くなる人を少しでも助けようと奔走するも裏目にでるわ。あげくにあの無慈悲なエンディングですよ。
衝撃のラストシーンが示す警鐘
予期せぬ未来への、さらなるタイムスリップ
ラストシーンでは、主人公たちが突然の閃光と共に廃墟と化した街に目覚める。煙塵(えんじん)の中、よく見てみると昭和19年には無かった東京タワーが。
そこで主人公は「今は何年なんだ?」という問いが出てくるのですが、なんでどうやってどうして昭和19年にタイムスリップしたのか???という疑問同様、論理的にはわけがわからない状況ですが、この作品が言いたいことに比べれば些末なこと。
現代社会への痛烈なメッセージ
この作品は、戦争中この国に蔓延していた全体主義や現代人の平和ボケなどについて、改めて考えさせるドラマです。
ただし響く人には響くけど、そうでない人にはまったくそうでないのでしょうね。今どきはヒトラーも知らない人がいてビックリしますから。
最近の核兵器について
この物語は80年代が舞台になっており、その頃は戦後に開発された「水素爆弾」という原子爆弾よりはるかに強力な兵器が脅威として語られていた模様。
水素があるなら酸素爆弾もありそうだな、と調べてみたら、厳密な意味での「酸素爆弾」は存在しないが酸素を利用して爆発力を高める燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)というのがあるそうな。人間さんの探究心は、もう理解不能な領域にいます。
なお2023年に米国国防総省は、B61核爆弾の新型を開発する計画を発表しました。最新の航空機で運搬可能で、最大威力は360キロトン(広島原爆リトルボーイの24倍の威力)です。
「終わりに見た街」歴代の作品
山田太一さんの原作
原作小説は、1981年に発表されました。SF小説と歴史小説の要素を併せ持つ作品として知られており、戦争体験者としての山田さんの経験が反映されています。
その独特な設定と深いテーマ性から何度もドラマ化されており、1982年、2005年、そして2024年と、約20年ごとに新たな解釈で繰り返し製作されています。
1982年版
1982年8月16日月曜日、テレ朝系列で放送されました。主演の清水要治役は、細川俊之さん。細川さんといえば三谷幸喜監督「ラヂオの時間」のマイケル・ピーター/ドナルド・マクドナルド役が胸に深く刻まれています。
ラストシーンでは、主人公が焼け野原で倒れていて、煙の向こうに折れ曲がった東京タワーが見えるという、現代に戻っていることが描かれています。この演出は、たぶん「猿の惑星/Planet of the Apes」の、あの有名なラストシーンのオマージュですよね。
2005年版
2005年12月3日に「山田太一ドラマスペシャル・終戦60年特別企画」としてテレ朝系列で放送されました。主演は中井貴一さん、プロットは時代に合わせて書き直された部分もありますが、基本82年版に沿っています。もちろんラストは「今年は何年だ?」です。
2024年版
「テレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム」として、2024年9月21日に放送。約20年ぶり3度目のドラマ化です。次は2044年あたり?シンギュラリティの頃ですね。
主演は大泉洋、脚本は宮藤官九郎というドラマ界のお笑い二大巨頭が担当しています。時代は令和に移されました。